映画化希望

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2008年05月07日

■その12
 その日はセバスチャンが今までで一番怒った日になった。また、一番嬉しかった日にもなった。
 ある日、いつものようにセバスチャンの家に遊びに来たジェシカがこう言った。
「もうすぐ、私のお誕生日なの」
 セバスチャンは知っていた。お誕生日は一年でお母さんが一番優しくしてくれる日だ。いつもと違って、晩ごはんは自分の大好きなものばっかりだし、ごはんの後に甘くておいしいケーキも食べられる、とっても大切な日だ。
 セバスチャンはおいしいケーキの事を思い出して幸せな気分に浸っていた。ところが、ジェシカがこんな事を言い出した。
「でも、その日はお父さんが忙しくて家にいないの」
 セバスチャンは驚いた。ジェシカが意外な事を言ったからだ。お父さんがいないんだったら、誰がジェシカを祝ってあげるんだろう。おいしいケーキを誰と食べるんだろう。
「だから、今回のお誕生日は無いんだって」
 ジェシカの声をよく聞いてみると、いつもと違って少し寂しそうだった。セバスチャンはジェシカが落ち込んでいるのがわかった。それと同時に腹も立ってきた。お誕生日はとっても大切な日なのに、忙しいからってなくしちゃっていいもんじゃない!と思った。
「それっておかしいよ!お父さんはどうしても家にいてくれないの?」
 セバスチャンが聞くと、ジェシカは少し黙りこんだ後で悲しそうに言った。
「何回も、お願いしたんだけど。やっぱりだめって言われたの・・・」
 セバスチャンは困った顔で言った。
「なんで?本当にどうにかならないの?」
「もう・・・何回も聞いたんだけど・・・でも・・・」
 ジェシカは泣き出しそうな声をしていた。セバスチャンはジェシカを何とかしてあげたいと思った。
「うーん。何とかならないかな」
 ジェシカはうつむいて言った。
「なんともならないよ・・・」
「うーん」
 セバスチャンはジェシカを励ます方法を色々考えてみた。ジェシカはその間ずっとうつむいていて、一言も喋らなかった。
「うーん。いいアイデアはないかな」
 でも、なかなかいいアイデアが浮かばなかった。それからしばらく経って、ジェシカはボソっと言った。
「今日はもう帰るね」
 その日、ジェシカは落ち込んだまま家に帰った。ジェシカの声にはいつもの元気がなくなっていた。
 ジェシカが帰った後もセバスチャンはジェシカの事を考えていた。なんとかジェシカに元気を取り戻させてあげたいけど、どうしたらいいかわからなかった。セバスチャンは自分が不甲斐なくて悲しい気持ちになった。
 夜になって、マリアが家に帰ってくると、セバスチャンはマリアにジェシカの事を相談した。
「今日、ジェシカがね。もうすぐ誕生日があるって言ってたんだ」
 まだ家に帰ってきたばかりなのに、急に話しかけられて、マリアは少し驚いたが、荷物を置いた後、嬉しそうに答えた。
「あら!だったらジェシカのほうがお姉さんになっちゃうね」
「でもね。今回の誕生日はないんだって」
 マリアは首を傾げた。セバスチャンの言っている意味がわからなかった。
「それってどうゆう事?」
 セバスチャンは少し怒ったように言った。
「ジェシカのお父さんがね。忙しくてダメなんだって。だから、今回は無いんだって。でも、それっておかしいと思わない?誕生日って忙しいからってなくしちゃっていいもんじゃないよね。だって、ジェシカがかわいそうだもん・・・。だから、僕が何とかしてあげようと思ったんだけど・・・」
 マリアはセバスチャンの言っている意味がわかってきた。そして、セバスチャンがジェシカの為に怒っている事がとても嬉しかった。セバスチャンはとても優しい子に育っていると思って、自然と微笑んだ。
「うん。私も忙しいからってなくしちゃっていいもんじゃないと思うわ」
 マリアの言葉に反応して、セバスチャンは興奮して言った。
「でしょ!でしょ!お母さんもそう思うでしょ?」
 マリアはますます微笑んだ。
「うん。そう思う」
 セバスチャンは腕を組みながら言った。
「そうなんだけどさー。だからさ、ジェシカに聞いたんだよ。何とかならないの?って。でも、そしたらどんどん落ち込んじゃって。それからずーと考えてるんだけど・・・うーん。どうしたらいいんだろ?」
 マリアは少し考えると、人指し指をピンと立てながらこう言った。
「じゃあ・・・。セバスチャンと私でジェシカの誕生日をしてあげるってのはどうかしら?」
 セバスチャンは不思議そうな顔をした。
「えっ?」
 マリアは楽しそうに続けた。
「だから、私達で誕生日をしてあげるのよ」
 セバスチャンはマリアの言っている意味がわかってきて、急に目を輝かせた。
「えっ?本当?絶対それ、いいアイデアだよ!ジェシカもきっと喜ぶよ」
「うん。そうね。じゃあ、明日ジェシカに会ったら聞いてみなさい」
「うんうん。聞いてみるよ!」
 セバスチャンはその日の夜、ワクワクしていた。早くジェシカに誕生日の事を伝えてあげたかった。ジェシカはきっと元気になってくれると思って、楽しみでしょうがなかった。早く次の日にならないかなと思い、一生懸命寝ようとしたけど、興奮してなかなか眠りにつく事ができなかった。

2008年03月08日

■その11
 ジェシカは毎日のように、セバスチャンの家に遊びに来ていた。遊びに来る時間はだいたい決まっていて、学校帰りにそのまま来るか、好きなテレビがある時は、それを見た後にやって来た。
 ジェシカは色々な事をセバスチャンに話した。学校で起こった事や、自分の好きな食べ物の話、好きなテレビの話、それから、昔住んでいた街の事とお母さんの事も話した。
 セバスチャンはかわりに、マイケル先生に教えてもらった事を話した。その中でもジェシカが特に気に入ったのは、この町の由来に関する話だった。
 セバスチャンとジェシカが今住んでいるこの町は「シーサイド」という。でも、おかしな事に町の周りは山で囲まれていて、この町には海に面している場所がまったくなかった。
 マイケル先生が言うには、ずっと昔、まだこの場所に誰も住んでいなかった頃、開拓者達がこの場所を見つけて、豊かな自然と住みやすそうな平地が広がっていたので、ここに町を作ろうと思った。
 最初、開拓者達は気にしていなかったけれど、町に名前がないと不便だと気付いた。名前を考えようと、皆で頭を悩ませていると、一人の開拓者がこう言った。
「この町のすぐ側には海が広がっているから、シーサイドはどうだろうか?」
 開拓者達は、わかりやすいからそれがいいと思った。でも、開拓者の中には、町の側に海なんてあったかなと思った人がいたけど、すでに決まった後だったので、何も言わなかった。
 実は、この町にやってきた開拓者達のほとんどが山育ちで、本当の海を見た事がなかった。海は広くて水が張ってある場所と聞いていたので、最初この場所に来たときに、平地を囲うようにしてあった、大きな湖を海と勘違いしてしまった。それでついた名前が「シーサイド」だった。
 ジェシカはその話を聞いてアハハと笑って言った。
「勘違いして名前がついちゃったなんて変だね」
 それは、セバスチャンも同じ意見だった。
 ジェシカの学校が夏休みに入ると、夕方だけじゃなく、お昼くらいから遊びに来る事もあった。そして、たまに一日のほとんどをセバスチャンの家で過ごす事もあった。
 セバスチャンにも夏休みがちゃんとあって、その間はマイケル先生が家に来なかったので、かわりに親戚のジーンおばさんがやって来た。
 ジーンおばさんは、恰幅のいい、ちょっとした事でよく笑う人だった。テレビのサスペンス物を見るのが毎日の日課で、セバスチャンの家に来たときも、世話をしながらそれを欠かさなかった。
 ジェシカが初めてジーンおばさんに会った時、ジーンおばさんはその巨体からずーんとジェシカを見下ろした。ジェシカはそれにびっくりして、緊張してしまったが、ジーンおばさんはその様子を見て、大きく口を開けてガハハと笑った。そして、
「ジェシカちゃんね。今、パイが焼けたところだから。一緒に食べましょ」
と、優しくジェシカを家の中に入れてくれた。
 ジェシカは夏休みの間、セバスチャンの先生のマイケル先生にも出会った。
 その日、ジェシカが道を歩いていると、カクカクとロボットみたいな動きをしながら、向こうからやって来る青年がいた。その時、突風が吹いて、道端に落ちていたオンボロの傘が上空に舞い上がった。その青年はオンボロの傘の飛んでいく様子をずっと見続けて、なにかに納得したみたいに、自分のメガネをクイっと上げた。
 その様子を見ていたらジェシカは、ひょっとするとあの人は、セバスチャンの言っていたマイケル先生かもしれないと思って、話しかけてみると
「確かに私はセバスチャンの先生のマイケルです。但し、私の事は先生ではなく、ドクターと呼んで頂きたい」
と答えた。
 ジェシカが初めてマリアに会った時、少しだけ自分のお母さんの事を思い出した。マリアはジェシカに対してとっても優しくて、ジェシカはすぐにマリアの事が好きになった。
 ジェシカはたまに、セバスチャンに話すとちょっぴり恥ずかしい悩みをマリアに話した。マリアはそれを真剣に聞いて、自分なりに答えてあげた。例えば、学校でジェシカにいじわるをしてくる男の子の事を相談すると、「それはジェシカの事が本当は好きでやってるのよ」と教えてあげた。
 ジェシカと過ごす時間はマリアにとっても楽しかった。ジェシカはマリアに遠慮している様子がまったくなく、無邪気に何でも話した。マリアはそんなジェシカが楽しくて、自分の子供か妹みたいに、大切に接した。
 セバスチャンは不思議に思っている事があった。ジェシカは色々な話をしてくれるのに、お父さんの話になった時だけ、少しだけ暗くなるはなんでだろうと思っていた。
 ジェシカが言うには、ジェシカのお父さんは凄く忙しい人で、家にいる事が少ないらしい。たまに家にいると思ったら、お酒を飲んでいて、その時ジェシカが話しかけても、ほとんど話を聞いてくれないし、しまいには怒ってしまうらしい。
 だけど、セバスチャンはジェシカにはお父さんもお母さんもいていいなと思っていた。だから、ジェシカがお父さんの事はあんまり好きじゃないって言った時も、なんでそんな事を言うのかわからなかった。もういなくなってしまったけど、セバスチャンはお父さんが大好きだった。
 ジェシカは時々、セバスチャンの家から帰りたくないと思った。家に帰ってもお父さんはいない事が多いし、どこかでお父さんが買ってきたごはんを、一人で食べるのはもう嫌だった。でも、今日はお父さんが待っているかもしれないし、もしいたらきっと怒られるので、いつもちゃんと家に帰っていた。
 セバスチャンの家で遊んだ後、ジェシカが家に帰って来ると、やっぱり今日も家の明かりはついていなかった。ジェシカは置いてあったごはんを一人で食べた後、薄暗い部屋で寝るまでテレビを見て過ごした。

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プロフィール

南国特産

Author:南国特産

初めて小説を書きました。
もの凄くヘタですが、もしよろしければ読んでみてください。

感想等、お待ちしています。

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