映画化希望

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2008年02月16日

■その8
 ジェシカは最近ツイていなかった。最近というのは、この町に引っ越してくるちょっと前からだ。
 ジェシカは元々、ここからずっと遠くの都会で生まれ育った。今とは違って、コンクリートでできた家に住んでいて、たまにお母さんと大きなデパートに行くのが楽しみな子供だった。
 ジェシカのお父さんは銀行員をしていた。朝早く家を出て、夜遅くに帰ってくる人で、ジェシカが生まれてからも、家にいない事が多かった。ジェシカのお母さんもいわゆるキャリアウーマンで、保険のセールス員を朝から晩までやっていた。
 お父さんもお母さんも忙しかったジェシカは、ほとんど家の中で一人ぼっちだった。それを心配したお母さんは、ホームヘルパーを雇ってジェシカの面倒を見させていた。
 でも、ジェシカに不満はなかった。お母さんの仕事がお休みの日は、買い物に連れて行ってくれたり、遊園地に連れて行ってくれたりした。それにホームヘルパーのおばさんは、とてもおもしろい人で、ジェシカをいっぱい笑わせてくれた。
 ホームヘルパーのおばさんのおかげなのか、寂しい境遇の中でもジェシカは明るく元気に育っていった。でも、そんなジェシカを突然悲しい出来事が襲った。お父さんとお母さんが大喧嘩をして、離婚をすると言いだしたのだ。
 ジェシカのお父さんとお母さんは、何回か話し合ったけど、結局、結論は変わらなかった。2人がジェシカをどちらで引き取るか話し合った時、意外な事にお父さんが名乗りでた。しかも、今の仕事を辞めて、生まれ故郷にジェシカを連れて帰ると言い出した。
 そうゆう理由で、ジェシカはこの町に引っ越して来た。お母さんと離れてしまったのは寂しかったけど、またいつでも会いにいけばいいと思っていたので、そんなに傷ついてはいなかった。それどころか、新しい町での暮らしを、少し楽しみにしていた。
 ところが、この町に引っ越してきた次の日、新しい学校に初めて行った時、ジェシカにまたまた悲しい出来事が襲った。
 担任の先生に連れられて、クラスに向かう廊下を歩いている時、ジェシカは少し緊張していた。でも、いつものように元気に明るく挨拶をしようと決めていた。
 クラスのドアの前についたら、ジェシカは先生に、私が呼ぶまで待っていなさいと言われた。
 先生はガラガラっとドアを開けてクラスに入っていくと、まず「静かにしなさーい」と叫んだ後で、転校生が来たことをクラスの生徒達に伝えた。生徒達はそれを聞いて、ワーと盛り上がった。
 先生は困った様子でドアの向こうにいるジェシカを見て、入って来なさいと手招きした。
 ジェシカが緊張しながらクラスに入っていくと、生徒達は一斉にジェシカに注目した。ジェシカはさらに緊張して、顔が熱くなってきた。早く自己紹介をして、自分の机に座りたいと思った。
 ところが、先生がジェシカを紹介しようとして、声を出そうとした時、突然一人の少年が大きな声で叫んだ。
「デブー!!」
 すると、その少年の声を聞いて、生徒達が一斉に笑いだした。さっきまで静かだったクラスの中が、また騒がしくなってきていた。
 先生はもう一度、静かにさせようとしたが、生徒達が騒ぐ勢いのほうが上だった。ジェシカはその時、頭が真っ白になっていた。昨日の夜、一生懸命考えた自己紹介も、一瞬で忘れてしまっていた。
 先生は怒鳴り声を上げて怒った。最初に叫んだ少年と、あと何人かの生徒を名指しで注意した。注意された生徒は、それでも騒ぎをやめなかった。怒った先生は顔を真っ赤にしながら生徒の頭にゲンコツをした。すると、ゲンコツをされた生徒は、「痛っ」と言った後で半分泣きながらおとなしくなった。
 先生がゲンコツをした後でも、小さな声でクスクスと笑う声が聞こえていた。先生は、まだ笑っている生徒がいる事がわかっていたけど、このままジェシカに自己紹介をさせようと思った。
 ジェシカはすこし笑い声のするクラスの中で、自分の名前を黒板に書いた。黒板に書いた後、振り返ると、意地の悪そうな男子がこちらを見ながら笑っているのがわかった。先生はジェシカを「クラスに新しく入ってきた友達」と紹介したが、ジェシカはこんな子たちと友達になんかなりたくないと思った。
 その日から、ジェシカにとって学校は最悪なものになってしまった。いままで学校がそんな場所だと思った事もなかった。
 それから、次の休み明けの日まで、ジェシカはクラスの生徒達と一言も話さないで過ごした。本来、ジェシカは明るい性格の持ち主なのに、たわいもない一言が、ジェシカの心を塞いでしまっていた。
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■コメント

■ [たもつ]

子供は残酷ですね。気のない一言が、その人の一生を左右しかねないのですから。子供というより、言葉や言葉をつかう人が残酷なのですね。
情景が浮かびやすい、とても読みやすい文章で、惹かれました。

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南国特産

Author:南国特産

初めて小説を書きました。
もの凄くヘタですが、もしよろしければ読んでみてください。

感想等、お待ちしています。

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