映画化希望

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2008年02月01日

■その5
 マイケル先生の授業は午前の部と午後の部に分かれていて、午前と午後の間に昼食の時間があった。
 マイケル先生とセバスチャンの昼食は毎朝マリアが会社に行く前に作ってあげていた。朝は時間が無いので簡単な物が多かったけど、マイケル先生はマリアのこの「手料理」を密かに楽しみにしていた。
 そのかわり、マイケル先生はセバスチャンに昼食を食べさせてあげていた。この時のマイケル先生はスーツが汚れるといけないからといって、白いヒラヒラの着いたエプロン姿でちょっぴりまぬけだった。
 今日の昼食はサンドイッチだった。まだ、一口しか食べてないのにマイケル先生がこう言った。
「今日もセバスチャンのお母さんのごはんはおいしいな」
 いつもは寡黙なマイケル先生なのに、この時ばっかりはやけに上機嫌だ。子供のセバスチャンでもなんとなくそれがわかっていた。
「そうかなー。おいしいけど、僕の嫌いな野菜が入ってるもん」
 マイケル先生は自分の奥さんでもないのに、マリアの料理にケチをつけられて、ちょっとムッとした。
「野菜を食べないと。大きくなれないぞ!」
 マイケル先生にそう言われたので、セバスチャンはしかたなく嫌な顔をして野菜を食べた。
「この野菜、何て言うんだっけ?」
 マイケル先生はサンドイッチに挟まっている野菜を見た。それは子供達の中で嫌われ者No1のタマネギだった。しかも、さっきは偉そうなことを言っていたマイケル先生も、実はこのタマネギが少し苦手だった。
「これはタマネギだよ」
 セバスチャンはタマネギの事を思い出した。あのヘンテコな味のする嫌なヤツだ。
「なんで。お母さんはタマネギを僕に食べさせようとするのかな?」
 マイケル先生はセバスチャンの意見に同意だったが、ここで認めるわけにはいかなかった。
「それは、セバスチャンのためを思って入れてくれてるんだよ」
「僕のためを思ってくれてるんなら、ベーコンのほうがいいのに・・・そしたら、僕はもっと喜ぶよ」
 マイケル先生は少し考えた。
「思ってるって言うのは、嬉しい事だけをしてあげるって事じゃないんだ。セバスチャンが悪い事をしたら怒られるだろ?」
 セバスチャンは怒ったマリアを想像した。マリアは普段優しいだけに、怒ると凄く怖い。セバスチャンは急いでサンドイッチを平らげた。
「ごちそうさま。おいしかった・・・かな」
 午後の部は授業というよりはマイケル先生がセバスチャンと体を動かして遊んであげる時間だった。マイケル先生はこの授業を始める前に、スーツを脱いでジャージ姿に着替えていた。なんでも、スーツよりもこちらのほうがやる気がでるらしい。
 体を動かして遊んであげるといっても、セバスチャンにできる事は限られていて、キューと体をストレッチしたり、ぴょんぴょんジャンプしたり、ボールをポーンと上にあげたりする事だけだったが、それでもセバスチャンはこの授業を楽しんでいた。
 何故かはわからないけど、運動が変わる度にマイケル先生がいちいちピーと笛を吹いて「じゃあ、次はこの運動だ」と言うのがおもしろかった。それに、少しだけお父さんの事を思い出した。はりきっている時のマイケル先生は、どことなくお父さんに似ている気がした。
 午後の部の授業が終わると、マイケル先生は学校に戻る予定になっていた。町の教育規定でそう決まっているからだ。
 マイケル先生はセバスチャンの事が心配で、このままマリアが帰ってくるまで家にいようかなといつも思ったけど、一人で家にいれないと今後困る事があると知っているので、必ず時間通りに家を出て行った。
「じゃあ。私は学校に戻るから、危ない事をしないように」
「うん。ありがとーございました」
 マイケル先生はセバスチャンの方を見ながらうんと頷くと、家を出て行った。
 マイケル先生が学校に戻ってマリアが家に戻ってくる迄の1時間、セバスチャンはこの家に一人で過ごす事になった。一人でいると危ない気がするけど、この家の中ならほとんど感覚でどこに何があるのかわかるし、マリアと約束した「一人で家にいる時のルール」をちゃんと守っていたので大丈夫だった。

[一人で家にいる時のルール]

 その1. 家の外に出てはいけない。(庭までならOK)
 その2. なにか困った事があったら首にぶらさげているベルを鳴らす。(とても重要!)
 その3. のどがかわいたらいつもの所に飲み物が置いてある。但し飲みすぎてはダメ。(お腹がこわれるから)
 その4. トイレにいったらちゃんと水を流す。(よく忘れるから)
 ・・・

 他にもいっぱいあったけど、これだけ覚えていればとりあえず大丈夫だった。首からぶらさげている「お楽しみバック」には、今日のおやつも入っているし。マリアが帰って来るまでの間、セバスチャンは結構のんきに家の中の時間を楽しんでいた。
 セバスチャンはこれから何をしようと考えていたけど、やる事は大体決まっていた。
 マイケル先生が学校に戻ってから、10分経ってないぐらいに、家の中でアラームがこだました。それはマリアが夕方にセットしてあったもので、もうすぐ『チキュウミステリー』が始まるという合図だった。
 セバスチャンは思い出したかのように、授業で使っていたテーブルから回れ右をして歩き始めた。頭の中で20歩数えて手を伸ばすと、冷たい感触がしたので、庭の外に出る窓に辿り着いた事がわかった。
 窓を開けて、庭の入り口に置いてあるはずのスリッパを足の感覚で探し出して、器用に足に通した。庭に出て少し右側を歩くと、コツっと何かに当たった感触がした。その感触はセバスチャン用の椅子だとわかったので、向きを変えて、おしりからドーンと座りこんで一言「ふー」と言った。
 椅子に座ったセバスチャンは椅子の隣に置いてあるはずのラジオを手探りで探し始めた。そのラジオはカクカクの旧型の形をしてるので、手がラジオの角に当たって痛い思いをした事が何度かあった。
 ラジオを上手に見つけ出したセバスチャンは、ラジオの一番左端にある赤色のスイッチをガシャっと押した。そうすると、セバスチャン憧れのあの人の声が聞こえてきた。
「えー。今日も始まりました地球ミステリー。私は司会のポーリー博士です。今日の最初の話題は・・・」
 後は、『チキュウミステリー』に熱中するだけだった。首からぶら下げてある「お楽しみバック」からお菓子を取りだして、セバスチャンは優雅なひとときを過ごし始めた。
 『チキュウミステリー』は30分番組だった。番組が終わると同時にセバスチャンはラジオのスイッチをガシャっと切った。それと同時にセバスチャンの優雅なひとときも終わってしまった。
 セバスチャンは『チキュウミステリー』の後に始まるニュース番組には興味が持てなかった。誰々が死んだとか、酷い事故が起きたとか、戦争がどうだとかいう悲しい話題ばっかりで、聞くと嫌な気分になってくる。なんでこんな事をわざわざ放送しているのか、セバスチャンには理解できなかった。だから、ニュース番組が始まるとラジオを聞くのをやめて、色々な事を考えた。今日あった楽しかった事とか、大好きな人達の事とか、明日のおやつの事とか。
 夕方になった町並みはとても美しく、セバスチャンが座っている庭から見える歩道は、夕日が反射してキラキラと輝いていた。残念ながらセバスチャンにはこの美しい町並みを見る事ができなかったけど、それでもザワワと木が揺れる落ちついた音や、甘い花の匂いや、夕暮れで少し冷たくなった爽やかな風達がセバスチャンの気持ちをよくさせてくれた。
 セバスチャンが椅子に座って、黄昏ていると、家のドアがガチャっと開いて、聞き覚えのある声が聞こえた。
「ただいま。セバスチャン元気にしてた?」
 それは、夕食の材料を片手で抱えて帰ってきたマリアの声だった。セバスチャンは嬉しくなって元気に言った。
「おかえり!おかあさん」
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■コメント

■夜遅くにこんばんは^^ [らすねる]

マイケル先生、ピュアですね^^可愛いと言うか何と言うか・・・。

少し気になったんですけど、
>マイケル先生はセバスチャンの事が心配で、このままマリアが帰ってくるまで家にいようかないつも思ったが、

ここ、~家にいようかな「と」いつも~、ではないですか?

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南国特産

Author:南国特産

初めて小説を書きました。
もの凄くヘタですが、もしよろしければ読んでみてください。

感想等、お待ちしています。

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