映画化希望

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2008年02月21日

■その9
 学校が休みの日、ジェシカはお父さんと一緒にパン屋に行った。
 この町では、休日の朝にパンを買いに行く人が多い。それは、毎日忙しく朝ごはんを作っている母親を、この日だけはゆっくりさせてあげる為らしい。でも実はその風習は、ジェシカが今日やって来た「マザーズベーカリー」というパン屋が、お店を繁盛させる為に勝手に考えた事で、その事を知っている人はほとんどいなかった。その風習のせいもあって、マザーズベーカリーの店内は人で溢れかえっていた。
 ジェシカはお店に入るとお父さんに「パンを2つ選びなさい」と言われた。ジェシカは「うん」と答えて、並べられてあるパンを全部見て回った。
 気に入ったパンがいくつかあってジェシカは凄く悩んだけど、結局、初めから決めていた、カラフルなチョコチップがいっぱいついたドーナツと、マジカルミミーをかたどったお菓子のパンにする事にした。
 ジェシカがお父さんに選んだパンを言うと、お父さんはそれをプラスチックでできたトレイにひょいひょいと乗せた。それから、自分の分も追加して、2人はレジに並んだ。
 レジには長蛇の列ができていて、まだまだ時間がかかりそうだった。ジェシカは、早く買って帰ってお家で食べたいのにと思っていた。
 レジを待っている途中、お父さんの携帯電話が突然鳴りだした。お父さんは急いで電話にでると、小声で「もしもし」と話した後、一旦話すのをやめてから、
「お父さんはちょっと電話をしないといけないから、レジでお金を払いなさい」
 と、ジェシカに言った。
 突然そんな事を言われて、ジェシカは困ってしまったけど、お父さんはそんなジェシカの事なんて気にしていないみたいで、ジェシカに小さな小銭入れをポイっと手渡して、一人でお店の外に出て行ってしまった。
 ジェシカは一人になって、少し不安になった。だけど、一人でお菓子を買ったこともあるし、大丈夫だろうと思っていた。
 しばらくすると、ジェシカの順番がやって来た。レジのおばさんは手馴れた手つきでパンをビニール袋に入れると、パン代をジェシカに伝えた。ジェシカはお金を払おうと思って、小銭入れの中身を見た。すると、小銭がいっぱい入っていて、うまく数えられそうになかった。そこで、ジェシカはレジの前で小銭入れをひっくり返して、数える事にした。
「いーち、にーい、さーん・・・」
 レジのおばさんはジェシカが小銭を数えている間、しばらく待っていた。だけど、ジェシカがあまりにも遅かったので、一緒に数えはじめた。
 2人が数えだしてからしばらくすると、レジのおばさんは困った顔をしながらジェシカに言った。
「あらー。これだけじゃたりないわ」
「えっ」
 ジェシカは驚いた。まさか、お金がたりないなんて、思ってもいなかった。
 驚いているジェシカを見て、レジのおばさんはもう一度小銭を数えてみたけど、やっぱり足りていないみたいだった。
「もうお金は持っていないの?」
「・・・」
 困ったジェシカはお父さんを呼ぼうとした。だけど、レジに並んでいる人達と、パンを選んでいる人達がジェシカの周りを囲んでいて、見つけられそうになかった。
 レジのおばさんはジェシカに聞いた。
「お母さんはいないの?」
 ジェシカは困った顔で答えた。
「・・・今は、どこかで電話してるの」
 レジのおばさんはそれを聞いてますます困った顔になった。ジェシカもどうすればいいのか分からなくて、レジの前で呆然と立ち尽くしていると、レジに並んでいる客達の中から「早くしてくれ!」と少し怒った声が聞こえてきた。
 レジのおばさんはしょうがないので、お金を持ってもう一度並んでもらおうと思った。その時、ジェシカのちょうど後ろに並んでいたおじさんが、2人の間に入ってきた。そのおじさんは毎日の日課で、パンを買いに来ていたトムおじさんだった。
「その子の足りない分は私が払うよ」
 少し緊張したような声で、そう言ったトムおじさんは、すべてのパン代を払った後で、ジェシカをお店の外に連れ出した。
 トムおじさんはお店を出ると、ジェシカを出口の横にあるベンチに座らせて、ハハハと笑いながら言った。
「いやー大変だったね。君のお母さんはどこにいるんだい?」
 ジェシカは答えた。
「お母さんじゃなくて、お父さんと来たの。でも、お父さんはどっかで電話してるの」
 すると、トムおじさんは少し薄い頭をぽりぽり掻いて、困った顔をした。
「そうか。でもどこにいるんだろうね。うーん。困ったな」
 トムおじさんが困っているので、ジェシカはキョロキョロと辺りを見渡した。すると、道の向こうでまだ電話をしているお父さんの姿を見つけたので、トムおじさんに、お父さんはあそこにいるよと指を射して教えた。
 トムおじさんはジェシカのお父さんを見ると、少し驚いたように言った。
「おお、彼がお父さんなのかい?かなり昔にこの町から出て行ったと思っていたんだが。もしかして帰ってきたのかな?驚いたな」
 そう言った後、トムおじさんはジェシカに聞いてきた。
「すると・・・君は最近、引っ越してきたのかい?」
 すると、ジェシカは少しはぶてた顔をして言った。
「うん。多分そうだと思う。でも、前のとこの方がよかったな・・・」
 トムおじさんは不思議そうな顔をした。
「ん?なんでだい?この町は暮らしやすくていいとこだよ」
 トムおじさんはそう言って、ジェシカにニコッと笑いかけた。でも、ジェシカの顔ははぶてたままだった。
「・・・だって、まだ友達できてないもん・・・」
 トムおじさんはハッとした。引っ越してまだ間もないから、友達がまだできていないのは仕方ないかもしれないが、前のところにとても仲の良い友達がいて、この子はツライ別れをしてきたのかもしれないと、勝手に想像した。
 しばらく2人は何も言わずにジェシカのお父さんの様子を見ていた。すると、お父さんはこちらに気付いたみたいで、トムおじさんに軽い会釈をした。トムおじさんはそれに対して、軽く手を挙げて返事をした。
 トムおじさんはジェシカの方を見て言った。
「君のお父さんは、まだ電話をしているみたいだから、電話が終わるまで私もここで待っていよう」
 トムおじさんはそう言うと、ジェシカの横に座わって、自己紹介を始めた。
「私の名前はトム。ずっと昔からこの町に住んでいるんだよ。君の名前は何て言うんだい?」
 ジェシカは元気に答えた。
「私はジェシカだよ」
「ははは、元気いっぱいだね。今、何歳だい?」
 ジェシカは少し考えた。
「うーんと・・・8歳だよ」
 トムおじさんはうんうんと頷いた後、にっこり笑いながら言った。
「私はね、君のお父さんの事を昔から知ってるんだよ。まだ、お父さんが君ぐらいの時からね」
 ジェシカは少し不思議そうな聞いた。
「ふーん。なんで?」
 トムおじさんは少し自慢気に答えた。
「私はこの町で生まれてから、一度も外に出て行った事がないからね。だから、この町の事なら何でも知ってるんだよ。君は引っ越して間もないだろうから、わからない事があったら何でも私に聞きなさい」
 トムおじさんはジェシカにこの町を好きになって欲しかった。もし、この子が町を好きになってくれなかったら、町の話をした自分の責任になるかもしれないと、少し大げさに考えていた。
 それから、トムおじさんとジェシカは、この町についてしばらくお話をした。ジェシカはトムおじさんとお話しをするのがとても楽しかった。この町に引っ越して来てから、ほとんど人と話をしていなかったので、そのうっぷんをトムおじさんに全部ぶつけた。
 2人の話がだいたい終わった頃、トムおじさんは思い出したかのように、近所に住む目の見えない少年の話を始めた。
「そういえば、近所に君と同じ8歳の男の子がいるよ」
 トムおじさんは少し切なそうな顔をしていた。
「その子はね、セバスチャンという名前でね、とても優しくていい子なんだよ。でもね、見た目は普通の子と全然変わらないのに、不思議な事に目が見えないらしいんだ。でも、変な風に思っちゃだめだよ。本当にいい子だからね。仲良くしてあげなさい」
 ジェシカは思った。見た目は普通なのに目が見えないって、どうゆう事だろう。
 トムおじさんは念を押すように言った。
「わかったね?」
 ジェシカは不思議に思いながらも返事をした。
「うん。わかった」
 セバスチャンの話が終わったぐらいに、ジェシカのお父さんがジェシカのところに戻ってきた。
「トムさん。すみませんでした」
 ジェシカのお父さんはトムおじさんにペコリと頭を下げた。すると、トムおじさんは少し怒った顔でお父さんに言った。
「子供を一人で置いていってはいかん」
 そして、今度はにっこりと笑ってジェシカに言った。
「おとうさんが戻って来たから、私はそろそろ行くとするよ。ジェシカありがとう。楽しかったよ」
 トムおじさんはジェシカにバイバイと手を振って帰って行った。ジェシカもトムおじさんにバイバイと手を振った。
 ジェシカは家に帰る途中、お父さんにトムおじさんの事と、目の見えない少年の事を話した。せっかくジェシカが話してるのに、お父さんはトムおじさんとは違って、別の事を考えながら聞いているみたいだった。
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■コメント

■こんばんわ [らすねる]

トムおじさんもいい人ですね^^
ジェシカのお父さんは一体何を考えているんでしょうか?
ではでは、続きを楽しみに待ってます^^

■ [プニ嫁]

ドーナツうまそうですね。

マジカルミミーはやっぱり魔法少女なんでしょうか?
私はクリーミーマミ世代なので、そこがとても気になりました。

がんばって書き続けてください。

■ [南国特産]

>らすねるさん

コメントありがとうございます。
ジェシカのお父さんは実は・・・あんまり考えてないです。
多分、のちのち話に絡んでくるかも。

>プニ嫁さん

コメントありがとうございます。
マジカルミミーは魔法使いなんだと思います。
テキトーです。ひどいもんです。

■どうも。 [ベイビーラブ]

こんばんわi-238
ココ最近風邪で1週間近く寝込んでしまいましたi-230風邪、くれぐれもひかれない様にお気をつけ下さいi-227
それから、小説にお褒めのお言葉ありがとうございましたi-179すごく嬉しかったですi-228
お話、寝込んでる間に進んでますね、、、うらやましいi-238
それと、やさしい雰囲気のトムおじさま素敵ですねi-178

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プロフィール

南国特産

Author:南国特産

初めて小説を書きました。
もの凄くヘタですが、もしよろしければ読んでみてください。

感想等、お待ちしています。

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