映画化希望

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2008年02月13日

■その7
 セバスチャンはその日、朝から憂鬱だった。
 その日は、朝起きるとポトポトとセバスチャンの嫌いな雨が降っていた。雨の音で目を覚ましたセバスチャンは、起き上がってムスっとした。今日は朝の体操が外でできない。だからトムおじさんとも話せない。つまんないなとほっぺを膨らました。
 マリアは雨が降る日はセバスチャンの機嫌が悪い事を知っていた。起きてきたセバスチャンにむかって、
「今日は雨で残念ね」
 と言うと、セバスチャンのほっぺはさらに膨らんだ。
 夕方になってマイケル先生が学校に戻ったくらいには、すっかり雨が止んでいた。どうせ止むならもっと早く止めばいいのに。セバスチャンはそう思って不機嫌な顔になった。
 怒っていてもしょうがないので、セバスチャンはいつものように『チキュウミステリー』を聞く事にした。雨で少し濡れた庭の椅子に座って、ラジオのボタンを押そうとしていたら、突然、誰かが話しかけている声が聞こえた。
「あなたの名前はセバスチャンね。わたしはジェシカ」
 最初、セバスチャンはよくわからなかった。自分に話しかけてくるのは、お母さんか、トムおじさんか、マイケル先生だけだったので、その声が自分に話しかけているとは思わなかった。
 セバスチャンは少し戸惑いながら黙っていた。すると、
「あなたはセバスチャンじゃないの?」
 さっきの声がまた聞こえた。しかも間違いなくセバスチャンと言っている。困惑したセバスチャンは「セバスチャン」っていうのは自分の名前だったっけと考えてみた。すると、そういえばさっきまで家にいたマイケル先生が「セバスチャン」って呼んでいた事を思い出して、急いで返事をした。
「うん。ぼくはセバスチャンだよ」
 セバスチャンがそう言うと、しばらくして返事が返ってきた。
「あなたに聞きたい事があるの」
「なあに?」
「・・・目が見えないって聞いたんだけど、本当?」
 セバスチャンは少し首を傾げた。何でこんな事を聞くのだろうと思った。
「うん。見えないよ。声や匂いはわかるけど」
「じゃあ。私の姿も見えないの?」
「うん。見えないよ。でも声がするからどこらへんにいるかはわかるよ」
 その声は少し黙った後で、不思議そうに聞いてきた。
「じゃあ、どこらへんにいるか言ってみて」
 セバスチャンは少し考えた。前のほうから声が聞こえている気がした。
「僕のちょっと前かな」
 そう答えた直後だった。セバスチャンのすぐ近くで、いままでに嗅いだことのない匂いがふわっとした。それは甘い花のような、香ばしいお菓子のような、不思議な匂いだった。
「今度はどこにいるかわかる?」
 セバスチャンは今度はびっくりした。その人は自分のすぐ目の前にいると思ったからだ。どうしようかと思ったけど、どうしようもないので正直に答える事にした。
「ぼ、ぼくのすぐ目の前かな」
 セバスチャンがそう言った直後、目の前からアハハと楽しそうな声が聞こえた。セバスチャンは何となくわかった。今自分が話している相手は、自分と同じ子供だ。
「セバスチャンって不思議」
 その子はそう言うと、もう一度アハハと楽しそうに笑っていた。なんでこの子はそんなに楽しそうなのかわからなかったけど、セバスチャンもなんだか楽しくなってきた。
「君は誰なの?」
 セバスチャンは多分今、目の前にいる子に聞いた。すると驚いたような口ぶりで返事が返ってきた。
「え!?さっきも言ったじゃない。私は〝ジェシカ〟よ」
 そういえば確かにさっき、〝ジェシカ〟って言っていた。セバスチャンは思い出した。あまりに突然の出来事だったので、すっかり忘れていた。
 セバスチャンはジェシカに聞いた。
「僕の家に入って来たの?」
 ジェシカはあっさり答えた。
「うん。庭の柵の隙間から簡単に入れたよ」
 そして、少し自慢げに言った。
「びっくりしたでしょ」
 ジェシカが言うようにセバスチャンは本当にびっくりしていた。そしてふいにトムおじさんの話を思い出した。最近、この町に引っ越してきた新しい人の話だ。もしかすると、ジェシカは引っ越してきた人かもしれない。
「君は最近、僕の家の近くに引っ越してきた新しい人?」
 ジェシカはハキハキした口調でこう答えた。
「うん、そうよ。このあいだ引っ越してきたの」
 その直後、セバスチャンは突然手に暖かいものを感じた。どうやら手を握られているみたいだった。その手はセバスチャンよりも小さな手で、自分より小さな手に触れる事は初めての体験だった。暖かい人の温もりが伝わってきて、セバスチャンは少し安心した。
 ところが、安心できたのはつかの間だった。さっきまで止まっていたその手は急に上下に動き、セバスチャンの腕をブンブン振り始め、慌てているセバスチャンの事なんておかまいなしで、スピードをどんどん加速していって、最終的に繋いでいた手をポーンと振り払った。
 セバスチャンは急に手を離されたので、椅子から滑り落ちそうになって、思わず「うわっ」と声を出した。セバスチャンを驚かせた張本人のジェシカは、それを見て指差しながら笑っていた。
 ジェシカは悪びれた様子もなく、楽しそうに聞いてきた。
「また、びっくりした?」
「うん。すごく、びっくりしちゃった。でも、面白かった」
 さっきの衝撃のせいなのかわからないけど、セバスチャンはトムおじさんが言っていた事をまた思いだした。
「そういえば。君は僕と同じ8歳の『オンナノコ』だよね?」
 セバスチャンが急に変な事を聞いてきたので、ジェシカは少し面白かった。
「そうよ。私は女の子だよ。セバスチャンには女の子の友達はいる?」
 セバスチャンは少し寂しそうに言った。
「いないよ。それに僕には子供の友達もいないし」
 ジェシカは少し黙った後、言った。
「そっか。じゃあ、私が友達になってあげる」
 ジェシカはにこっと笑ってセバスチャンと再び握手をした。ついでに、油断していたセバスチャンの隙をついて、手をポーンをもう一回した。それから、『友達の証』に持っていた『クラウンビスケット』をセバスチャンにあげた。
 セバスチャンはクラウンビスケットを貰うと、口の中に入れてみた。すると、一口食べた瞬間に、その味に感動した。クラウンビスケットはいつもマリアがくれる『アマサヒカエメ』ってお菓子とは段違いだった。口いっぱいに甘さが広がって、名前に負けていない味だった。
 感動しているセバスチャンを見ながら、ジェシカは喋り始めた。
「セバスチャンはいつもここに一人でいるの?」
 口の中にあるクラウンビスケットをモグモグしながらセバスチャンは答えた。
「うん。勉強が終わったらここでラジオを聴くんだ」
 そういえば忘れていた。セバスチャンは『チキュウミステリー』の事を思い出した。でも、まあいいやと思った。
「どこにも遊びにいかないの?」
「うん。お母さんもトムおじさんも家の外からでちゃだめだって言うんだ。たぶん、僕の目が見えないからだと思う」
「ふーん。遊びにいけないのはつまんないね」
「うん。・・・ときどきつまんないけど、楽しい事もあるよ」
 ジェシカは不思議そうに聞いた。
「どんな時?」
 ジェシカにそう聞かれて、今日の楽しかった事は何だろうと頭を捻った。今日は朝から雨が降っていたし、お昼ごはんにはやっぱりタマネギが入っていたし、何だろう?
 よくよく考えてみると、今こうやってジェシカとお話をしている事が、今日一番の楽しい事だと気付いた。それどころか、今までで一番かもしれないと思った。
「今、とっても楽しいよ。君とお話していると」
 ジェシカは目を丸くさせた後、また楽しそうにアハハと笑った。
「私とお話をするだけで楽しいの?」
「うん。とっても楽しいよ。」
 ジェシカはにっこり笑った。
「じゃあ。もっとお話してあげるね!」
 それからジェシカは、最近流行っているおもちゃのスライムの話や、クラウンビスケットのいちご味はいちごの味がしないから買っちゃダメって話や、テレビのマジカルミミーが来週で終わっちゃう話をしてきた。
 セバスチャンは夢中でジェシカの話を聞いた。たまに興奮して、
「君はいろんな事を知ってるんだね。すごいや!!」
 と言うと、ジェシカはアハハと笑った。セバスチャンはなんで笑われたのかわからなかったけど、なんだかおもしろくなって一緒にアハハと笑った。
 ジェシカとお話をしていると、あっという間に時間が過ぎて行った。『チキュウミステリー』はもうすっかり終わってしまって、セバスチャンの嫌いなニュース番組も終わろうとして、辺りも暗くなっていた。
 ジェシカはまだいっぱい話したい事があったけど、家に帰らないといけないと思った。
「そろそろ私、帰らないと」
 ジェシカがそう言うと、セバスチャンは少し複雑な気持ちになった。ジェシカにまた来てもらいたいけど、一緒に外にはいけないから、つまらないかもと思った。
 ところが、ジェシカは帰り際にこう言ってきた。
「明日また来てもいい?」
 それは、セバスチャンにとって願っても無い言葉だった。セバスチャンの複雑な気持ちは一瞬で吹き飛んだ。
「うん!うん!また来て!」
 大喜びで答えてきたセバスチャンを見て、ジェシカはアハハと笑った。
「うん。またね」
 そう言うと、ジェシカはセバスチャンにバイバイの仕草をしながら帰って行った。帰っていくジェシカの後ろ姿は、なにか宝物でも見つけたみたいに楽しそうだった。
 マリアが帰ってきて、セバスチャンはジェシカの事をいっぱい話した。家の中に勝手に入って来たから、怒られるかもしれないと思っていたけど、全然そんな事はなかった。それどころか、「今度はジェシカちゃんの為にお菓子を準備しとかないとね」とマリアは嬉しそうだった。
 その夜、セバスチャンはジェシカの事を考えた。トムおじさんが言っていた、『オトコノコ』が『オンナノコ』を好きになる話がなんとなくわかった気がした。ジェシカの匂いはとてもいい匂いだったし、ジェシカの声はとても心地良かった。なによりもジェシカにまた会いたいと思った。それから、クラウンビスケットの事もちょっぴり考えながら眠りについた。
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■コメント

■ [らすねる]

セバスチャン達可愛いですねー^^
ジェシカが来たことで倍々になった気がしますw
本当に映画化して欲しいですよ^皿^
そうそう、リンクしてもいいですか?

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プロフィール

南国特産

Author:南国特産

初めて小説を書きました。
もの凄くヘタですが、もしよろしければ読んでみてください。

感想等、お待ちしています。

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